草津町の再開発
【なぜ文章を書くのか】
私のブログは、概ねもう今後会うことはないであろう人たちに対して書いている(偶然どこかで会ってしまう可能性もあるが)。
たとえ賛成されないような意見であっても、「もう会うことはない」と分かっていれば、気を楽にして書ける。人間同士というのは、今後とも付き合いのある相手に対して、自由に言いたいことが言えるようには出来ていない。遠い所にいる人の方が、内心を打ち明けやすかったりもする。文章というのは、遠い人に対して本音を伝えるためにあるのかもしれない。
はじめはメモ書き・まとめノート程度の使い方だったので、そもそも他人に読まれることを念頭に置いていなかった。しかし、二年前ぐらいの記事を自分で見返すと、自分でも何を書いているのか理解できない文章になっていたりする。あまり適当に書くと次に活かされないわけだ。
だから、少しは他人に読んでもらうつもりで書かなければ、自分にとっても価値のない文章になってしまう。それに、自分しか分からないような書き方をするのは、書き手の態度としても良くない。とはいっても、多くの人に読んでもらって拡散してほしいわけでもない。
私は自分の影響力を高めようとか、自分と同じ意見の人間を増やそうとして、情報を発信している人間が嫌いである。そんなことをしても時間の無駄だし、気持ち悪い。「インフルエンサー」になろうとするのは、露骨な権力欲の現れでしょう。
では、自己満足で文章を書いているかというと、そういう面もあるが、研究のためでもある。研究成果はいずれ形にしたい。「町や都市というのは、どのように移り変わるものなのか」そういう疑問をもって大学に行ったつもりだったが、都市計画や経済の教科書を開いても、特に腑に落ちることは書かれていなかった。講義を聞いても、教員は教科書の内容を棒読みし、ボードに書写しているだけだから何もわからない。
かといって、世の中のことは就職しても容易に分かるものではない。どんな職業・ポストであれ、社会人は巨大な装置のネジ1本に過ぎないのだから、実経験だけを頼りにしてもほんの少しのことしか明らかにはならない。あるいは、海外留学すれば全て理解できるとか、そんなウマい話はないだろう。
要するに、社会の仕組みに依存していると何も分からなくなってしまうのだ。社会に依存すると、その時代のオーソドックスな考え方が正しいものだと信じざるを得なくなってしまう。現代的な考え方に嵌れば嵌るほど、現実は見えなくなる。世の中のことを明らかにするなら、自分で情報を収集し、自分の頭で考える必要がある。このブログは、そういった調査を記録し、保存しておく媒体でもある。
【草津町の再開発】
草津町では最近になって再開発が行われている。主な内容は以下の通り。
2013年、湯畑広場に隣接していた町営駐車場を公共浴場(御座之湯)につくりかえ、さらに2014年にはもう一つの町営駐車場を広場(湯治広場)としてリニューアルし、中心街の自動車交通を抑制した。また2015年には、「湯もみ」の会場だった熱乃湯が大正ロマン風の新築に建て替えられた上に、電線類地中化も進められたことで、湯畑周辺に新たな景観がつくり出された。2016年には、夜の灯路計画として、湯畑の湯けむりがライトアップされるようになり、また「西の河原公園」も照明で演出されるようになった。(1)
最近では、裏草津(地蔵地区)も整備が進んでいる。湯源泉所、足湯その他設備が改築・新設されただけでなく、2021年には町主体で建てられた漫画図書館「漫画堂」およびカフェ「月の貌」が完成した。またそれに隣接する形で、新しく高台広場まで整備されている。(2)極めつけは、2023年度竣工予定の国道292号線と中央通りの立体交差化であり、交差付近には「温泉門」と称されるオブジェが建設される予定である。(3)
これらの事業には、それぞれ数億あるいは十数億の費用が投じられているという。そして、草津町の総入込客数も事業完成に伴って増加し、コロナ禍前の令和元年には過去最高(3,271,646人)を記録した。(4)
なぜ、今になって畳み掛けるように草津町は再開発されているのか。この背景には、町政の大きな変化がある。
現町長の黒岩信忠氏は、2010年に町長に就任して以降、上記の再開発プロジェクトの旗振り役を務めてきた。その下で草津町は、北山総合研究所や照明デザイナーの面出薫氏等に協力を依頼して、各事業を進めていった。初めのプロジェクトとなる湯畑広場再整備にあたっては、駐車場がなくなることについて一部で反対意見もあったが、町長は「銀座のど真ん中に駐車場が必要でしょうか?」と、住民及び町議を説得して回ったという。(5)
このように 「再開発」というのは、政治によって揺り動かされる。市場やコミュニティといった民間の中から引き起こされるものではない。これは東京も地方も変わらない事実であろう。もっとも東京の再開発は、中央政府と大企業が主体となって進めているものであり、自治体や住民の活動とは違う次元で進んでいるところに特徴がある。
東京では、都市再生特別措置法といった容積率緩和策により大規模プロジェクトを連発させる形で、大企業主導の再開発が行われてきた。また東京五輪という国家的なイベントの開催も大きな影響を与えている。そういったプロジェクトの中には、地区や住民の利益に反しているせいか、いくつか反対運動の起きている地域もある。(6)
一方で、草津町でも政治的なもめ事が無かったわけではないが、こちらは再開発をめぐる対立というよりは町長個人を狙ったゴシップであり、問題の性質が異なる。こういう問題はやめてもらいたい。(7)どちらが悪いかはともかく、草津の再開発は自治体が責任をもって進めている事業とはいえ、あれだけ急速に現状を変えているのだから、何らかの反発をくらうのも仕方ないのかもしれない。
再開発というのは、一概に良いとか悪いとかは言えない。教育と同じで、何をやれば効果が上がるか、すぐに分かるものではない。しかし、少なくとも急速に進められる再開発というのは政治的な混乱を招くということ、それから、そもそも再開発とは「政治」の産物であることは間違いないように思う。
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(1)https://www.projectdesign.jp/201612/hotsprings/003300.php
(2)https://gunma-dc.net/article/20/
(3)https://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20211014-OYTNT50142/
(4)https://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/contents/1485755746888/index.html
(5)https://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/contents/1519900896434/index.html
(6)https://merkmal-biz.jp/post/11288
https://www.asahi.com/articles/ASQ625SYXQ62UTIL01V.html
(7)https://bunshun.jp/articles/-/51625