LIFE LOG(カワカミ・レポート)

カワカミ・ノート

おもに都市計画やまちづくりに関わる考察などを書いていきます。

横浜と高崎

【要点】
 横浜と高崎における都市構造の比較。その根本的な違いは交通にあること。高崎にあって横浜には見られないエリア。

 

【本文】
 故郷に帰って、新しい居住区を少し見てまわった。
 もともと学生時代は横浜で過ごしていたが、四月から就職するにあたって、故郷である高崎に戻ってきたのだ。昔と同じく、高崎の夕焼けはきれいだった。
 見てまわった結果、横浜と高崎では、都市のつくりが結構ちがうことに気づいた。もしかしたら、全く違うといって良いのかもしれない。
 先に要点をいうと、その基本的な違いは、それぞれのまちにおける主要な交通手段によるものと思われた。横浜は鉄道中心であり、高崎は自動車中心なのである。
 横浜駅には、JRにくわえて市鉄もあるし、みなとみらい線東横線京急本線、相鉄線といった私鉄も充実している。そして、繁華街や観光地の存在する関内地域へのアクセスは、基本的に鉄道で確保することができる。横浜市内において、自動車に乗って遊びに出かける学生はほとんどいないといって良いかもしれない。
 さらに、横浜市の商業施設は、駅周辺にもっぱら存在している点もあげられる。横浜駅から関内駅にかけての臨海地域については言うまでもないが、郊外においても同様の傾向がみられるのである。
 例えば、横浜市相鉄線国道16号線と並んで敷設されているが、その駅周辺には商業施設がきちんと存在している。もちろん国道16号線にも、道路沿いに商店がいくつか立地しているが、小規模な飲食店やコンビニなどが一定の割合を占めており、駅利用者をターゲットにしていることがわかる。
 横浜市の商業立地は、駅周辺が主で道路沿いが従なのである。
 それに対して、高崎市ではこの関係が逆になっている。
 先に言ってしまうと、群馬県は運転免許保有率が全国でもっとも高い、日本を代表する車社会の地域だ。だから高崎市内では、病院へ行くにも、学習塾へ行くにも、コンビニへ行く時さえ、車に乗っていくことが普通のまちである。
 高崎駅には、JRと上信電鉄という私鉄しか通っていない。しかも上信電鉄とは、世界遺産である富岡製糸場への交通手段であるにもかかわらず、設備投資の不足によりSuicaPasmoといったICカードが利用できないという状況にある。
 要するに、高崎市の鉄道交通は横浜市よりも利用者が少ない。実際、横浜駅の1日の平均乗車人員は約42万人であるのにたいして、高崎駅の1日の平均乗車人員は約3万2千人という10倍以上の開きがある。もっとも、横浜市の人口は約372万人であるのにたいして、高崎市の人口は約37万人というように、そもそも人口規模からして両者には10倍の開きがある。(ちなみに、面積をみると横浜市は437km²で、高崎市は459km²と少し高崎の方が広い。)
 このような、人口規模および鉄道利用者数の違いが、都市のつくりにたいして大きな影響をもたらしているわけだ。つまり、高崎市の鉄道駅周辺は閑散としていて、商業施設は主に幹線自動車道路沿いに立地している。
 例えば、高崎市には、上野東京ラインと呼ばれるJR路線があり国道17号線と並んで敷設されているが、上野東京ラインの駅周辺は商店が非常に少ない。まったく見られないといって良いのかもしれない。国道17号線に、ほとんどの商店が吸収されている。国道沿いには、広々とした駐車場を設けた飲食チェーン店やスーパーマーケットといった、いわゆるロードサイド店舗が立ち並んでいて、そのような商業施設が地域の市場を席巻している。
 もっというと、横浜市には見られず、高崎市にのみ見られたエリアとして、ロードサイド店舗のみで構成された商業区域というのが存在している。幹線道路沿いのロードサイド店舗が集積して、自動車専用商業地域といって良いような独特のエリアが出来上がっているのだ。これはイオンのような大型ショッピングモールとは異なる。
 具体的には、先ほどあげた国道17号線以外にも、国道18号線環状線とよばれる市道などに存在している。そのようなエリアには、文具や衣類といった日用品を扱う商店から、家具や電化製品といった非日用品を扱う商店まで揃っており、市民の外食と買い物のほぼ全てがここで済んでしまうのである。これが日本屈指の自動車社会の様相である。
 高崎市の商業立地は、道路沿いが主で駅周辺が従なのである。